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【実践編第2回】コンセプトを見つけたら全てが回り出す!

こんにちは。「田舎で生き残る!小規模事業者のためのお金をかけないWEBマーケティング入門」管理人の82chisaです。

このブログでは、田舎の小規模事業者さんがお金をかけずにマーケティングを始めるための情報をお伝えするとともに、実際に私が、小規模事業者さんの実践をサポートする過程をレポートしていきます。

記事や本を読んでお勉強しただけでは机上の空論かも。
これ実践したら、ちゃんと成果が出せるの?

そんな疑問に読者のみなさんと一緒に向き合うべく、知人の新規事業のインスタグラム運用をお手伝いさせていただくことにしました!
実際に私たちが試したり、悩んだりしながら成長していく姿をご覧いただき、WEBマーケティングを取り入れて売上アップを目指す田舎の小規模事業者のみなさんにお役立ていただければと思います!

今回は【実践編第2回】。
「アカウント設計」で思わぬ罠にぶち当たった私とナルミさんは、フォロワー数の多い同業アカウントを参考にコンセプトワードを探すことにしましたが…

コンセプトとは「価値の設計図」

小さなお店の理想のインスタ運用を目指して、アカウント設計に取り組んだ私とナルミさん。
「アカウントとゴール」「ターゲットとペルソナ」と、順調に設計を進めていったはずでしたが、思わぬ落とし穴にハマってしまいました。

納得して決めたと思っていたペルソナが、実は決定的にズレていた!

これを修正するため、私とナルミさんはうまくいっているお店を参考にまずはお店のコンセプトワードを見つけようと考えました。

カフェレストラン「ナルミ・キッチン」の営業に加え、新店舗の開店準備で多忙なナルミさんと私とのミーティングは週に1回。でもコンセプトワードは1回ですぐには見つからないだろうと思い、ナルミさんからLINEで1日に1つ以上、頭に浮かんだキーワードを送ってもらうことにしました。

最初の日、ナルミさんから送られてきたLINEはこんな感じでした。

うん。

これらはすごく、ナルミさんらしい言葉たちです。
田舎の町では大抵みんな「ここには何もない」と自分の町を卑下してしまう。
でもナルミさんは「ないもの」ではなく「あるもの」に目を向けて、楽しい空間や時間を作ろうとしてきました。

新しいお店を作るにあたっても、その精神がナルミさんの中に流れているのはとてもとてもよくわかるし、そこがナルミさんの魅力です。

しかし「ナルミ・キッチン ラボ」が売る商品は「手みやげ」です。
お客さま側から見て、手みやげが欲しい時に行くお店のキャッチフレーズとして「楽しいを形にする」や「無ければ作る」と言われてもちょっとズレている。

私はこんな風に返信しました。

フレームワークでコンセプトを考える

「お客さまの視点で」と言ってみたものの、完全にまっさらな状態からコンセプトワードを考えるのは難しいのかもしれない。そう思った私は、ちょうどその頃に出会ったフレームワークを使うことをナルミさんに提案してみました。

「コンセプトの教科書」という本が大ヒットしている、株式会社TBWA HAKUHODO エグゼクティブクリエイティブディレクターの細田高広さんが提唱しているフレームワークで、コンセセプトを下記の3点で考えるものです。

1【主語】誰が
2【目的】どうする/どうなるために
3【役割】〇〇を提供する/担う

【主語】はお客さまであり、【目的】はお客さまのどんなニーズや問題を解決するのかであり、【役割】がお店の側が提供するものや担うことです。

「これに当てはめて考えてみてください」と伝えた後、ナルミさんから送られてきたLINEはこうでした。

うーん、カタい、カタいぞ…?

それに、ナルミさんから新店舗の構想を聞いた時のワクワク感がちっとも感じられない。
そうかあ、こういうフレームワークを見ると、真面目に考えすぎてしまうのかもしれない…

そこで、言葉の温度感を調整するために、これまでに私がナルミさんからヒアリングさせていただいた情報をもとに、私が「こんな感じかな?」と思うものを作ってみました。
私はこれまで何百人もの人をインタビューをして、記事を書いたり映像にしたりしてきたので、聞き取った内容から大事なポイントを見つけることに関してはちょっと自信があります。ナルミさんのお店が提供するものに仙台周辺の人が価値を感じてくれそうなストーリーを言葉にしてみました。

私が送った内容はこうです。

すると、ナルミさんから送られてきた次のアイディアはこうでした。

「お客さまの悩み」にフォーカスが近づいてきました。

そこは良い感触。
そして、新店舗に関するナルミさんの並々ならぬ強い思いも感じます。

ただ、「確実に相手を笑顔にする」「おしゃれだなあと思ってもらう」という【目的】の部分が気になります。

「ナルミ・キッチン ラボ」で最初の商品として売り出す予定なのは、柴田町の名物である観音様の形をした皮にさまざまな味の餡を入れた「観音焼き」と、柴田町の季節の食材を具材に使った「焼き立てパイ」です。

これらは「確実に相手を笑顔にする」「おしゃれだなあと思ってもらう」を求めているお客さまのニーズを満たす商品だろうか…?
そういうニーズなら、地元の題材や食材を使ったものにこだわる必要は無く、ネットでもリアルでも、おしゃれさを売りにしているお店や少し尖った商品展開をしているお店を探すのでは?

そのことをナルミさんに伝えると、次のアイディアはこうでした。

…なるほど、なるほど。

ナルミさんのやりたいことはズバリこれなのだな、と思う言葉です。
一番最初に出てきた「楽しいを形にする」や「無ければ作る」の解像度を上げた言葉になっていて、ナルミさんの思いやこだわりがよく表現されています。

でも「柴田町にはワクワクがたくさんあるんだと発見する」という目的を持って「手みやげ」を買いにくる人はいない。それはお店の側の思いであって、お客さまのニーズとつながっていない。

フレームワークに取り組んだことによって、ナルミさんがやろうとしていることの掘り下げはできたけれど、どうにもお客さま側の視点と噛み合う言葉になりません。

お客さま視点にしようとすると一般論に近いものが出てきてしまい、自分の商品とつながらない。自分が提供するものから考えようとすると、お客さまの視点と噛み合わない。

LINEでのやり取りがちょっと堂々巡りになってきたところで、次のミーティングの日がやってきました。

「自分のお店の価値」をもう一度深く考える

ミーティングの日、私はもう一度、ナルミさんがなぜこのお店をやろうとしているのか、作ろうとしている商品はどんなものなのか、最初のヒアリングよりも深く突っ込んで聞くことにしました。

「観音焼き」は、まさに柴田町の名物として作ろうとするもの。
「柴田町には何があるの?」と聞かれた時に「桜の名所」とは答えられるけれど、それと紐づいて買って帰れるようなものが無いから、桜の名所である船岡城址公園にそびえ立つ観音様をキャラクター化して商品にする。「無いなら作る」の精神です。

「焼き立てパイ」は、家族やご近所、友達の家へのちょっとした手みやげがほしい時に、ありきたりの甘いお菓子ではなく、おやつになるものもおかずになるものも、さまざまなバリエーションのパイがあると良いのでは、と考えたもの。

それぞれ詳しく聞くうちに、ナルミさんの口から「本当はジビエをやりたい」という言葉が漏れました。ナルミさんのご主人は狩猟免許を持っていて、イノシシなどを獲っているのです。それを食材として使いたいけれど、いろいろクリアするべき問題があり、すぐに製品化はできない。でも将来的にはジビエのパイやソーセージを作って商品に加えたい、とのこと。

「地元産のもの」への想いが伝わってきます。

ナルミさんは大きな農家の出身。気まぐれな自然と向き合って働き、大地の豊かな恵みを食卓に届けられる形に変えても、安く買い叩かれる現状を見てきました。

こんなにいいものがあるのにその価値が放って置かれているのはもったいない。

そういう想いがナルミさんの根底にあり、調理方法はシンプルながら具材を入れ替え可能で、季節の恵みを楽しめる、地のものを活かせるものとして「焼き立てパイ」を考案したことがわかりました。

それからもう一つ。

札幌に住む、ご主人のお父さん、お母さんのこと。
札幌には素敵なもの、美味しいものがたくさんあって、帰省するたびにいろいろ紹介してもらうのに、こちらから持っていけるものが何も無い。「萩の月」や「牛タン」は最初はいいけれど、毎回同じになってしまうし、ありきたりすぎてつまらない。いつも、「こっちからも『こんなものがあるよ』と持っていけるものがあったら」と思っていたそうです。

この気持ちには、私も強く共感しました。
東京から移住して長く宮城に住んでいますが、帰省する際のおみやげに全く同じ悩みがあったからです。これは、同じように思っている人が多くいるに違いない。

そこに、ナルミさんならではの視点を載せる。地域で埋もれている価値。さりげなく身のまわりにあるけれど、届けれられていないもの。

私は頭に浮かんだフレーズをパソコンのキーボードで打って、ナルミさんに見せました。

1【主語】宮城はイマイチいいものが無いと思っている人が
2【目的】遠くの人に自慢できるような
3【役割】地域のギフト(才能)を提供する

ナルミさんの目が、輝きました。

「すごい!それだ!」

コンセプトは経営の全ての指標になる

以前の記事で紹介したように、スターバックスのコンセプトワードは「第3の居場所」ですが、これが、お店を出す場所やインテリア、商品にいたるまで、全てを決める際の指標になっているそうです。

都会での生活者の職場と家庭の間の居場所なので、その役割を果たせる場所に出店する。
音が気にならないように紙製のカップでの提供を基本とするなど。
また、提供するのは「居場所」なので、テイクアウトのコーヒースタンドはスターバックスの競合とはならない、など、明確なコンセプトワードは経営のあらゆる場面で意思決定の指標となるといいます。

ナルミ・キッチン ラボで最初に提供する商品は2種類ですが、ナルミさんは今後、地域のさまざまな生産者とコラボレーションして商品のバリエーションを増やしていく計画です。そのビジョンの中にジビエを使った商品もあります。

贈り物を意味する「ギフト」という英語には「才能」という意味もあります。この意味を掛け合わせることで「ここには何も無い」と臆する状態から「こんなのあるよ!」と地域外の人に手みやげを渡せる。そんな未来を創るのが「ナルミ・キッチン ラボ」のコンセプトだ、と納得することができました。

このコンセプトワードがあれば、この先の商品づくりにも、お店づくりにも、インスタでの発信にも、芯が通せそうな感触を得ることができました。

コンセプトが見つかったら、お客さまが見えてきた

さあ、「これだ」と思えるコンセプトが見つかりました。

すると、最初に設定したペルソナ像の何が違っていたのかも見えてきました。
「ナルミ・キッチン ラボ」のペルソナは、仙台市やその周辺に住んでいる、県内外の田舎の出身者。大人になって都会に住み、家族もできてそれなりに順調に暮らしているものの、故郷のことが気になっている人です。本当は地元への想いもあるけれど都会での生活を選び、納得はしながらも、よいところを埋もれさせたままさびれている地元を歯痒く思っている、そんな人。

これで、ペルソナの悩みや、悩みに対して届けるメッセージも見えやすくなりました。
ペルソナ像とその悩みについてもう一度言語化して掘り下げつつ、インスタグラムのアカウント設計を先に進めていけそうです。

1【主語】宮城はイマイチいいものが無いと思っている人が
2【目的】遠くの人に自慢できるような
3【役割】地域のギフト(才能)を提供する

コンセプトは、初めからナルミさんの中に存在していたものだと思います。
でもそれを言語化することは、こんなに難しく、大切で、そして楽しいことなのだと学びました。

これで弾みをつけて、競合店舗のインスタアカウントのリサーチと、市場の中でのポジション決めを進めていきます。